3月1日付ブログ記事 「ABL融資とは何かご存知ですか?(その1)」
からの続きの話になりますがABL融資について、今回は借りる企業側から見たABL融資のメリット・デメリットについてお話をさせて頂きます。ABLについては、一見メリットばかりが強調されておりますが、ご利用には慎重な判断が必要です。
ABL融資のメリットは
企業側から見たABL融資のメリットは以下の点が挙げられます。
- 無担保で借りる信用力が乏しくても、運転資金の調達の道が開ける
たとえ、債務超過であっても、売掛金や在庫の資産価値があれば、ABL融資を検討することが可能です。これまで、無担保のプロパー融資や保証協会保証付きの融資が困難な企業でも資金調達の可能性があるメリットがあります。
東京スター銀行では、社会保険料や税金の延滞があっても対応します!とのフレーズが出ております。
- 会社の本社・工場や代表者の自宅などの不動産担保を利用しなくて済む
これまでの融資形態だと「担保」となると会社所有の不動産や経営者の不動産を担保にするケースがほとんどでした。ABLについては、基本的に「流動資産」を担保にすることから、これまでの担保の選択肢を広げ、資産の流動化を図ることができるのがメリットに挙げられます。
- 毎月の返済をつけなくて「ベタ借り」をすることが可能
運転資金を調達する際の理想的な借り方は「ベタ借り」です。
「ベタ借り」とは毎月の返済がつかずに、期限一括の返済を行う形態です。これまでの銀行の融資は「ベタ借り」を避け、毎月の「約定返済」をつけることで、回収の保全を高めていました。
しかし、ABLでは流動資産を担保にしていることで、新緑が殿しい企業でも「ベタ借り」が可能になるメリットがあります。
ABL融資のデメリットは
一方、企業側から見たABL融資のデメリットについても挙げてみます。
- 売掛債権、在庫の担保登記がされる
売掛債権については、第三債務者(売掛先)に通知をすることはありませんが、担保として正式に登記をすることが必須要件です。
売掛債権等の担保登記の事実については、商業登記保謄本に記載されることになります。しかし、今では「情報ファイル」という欄にしか記載されず、東京で言いますと中野法務局でしか見ることはできません。かつ、債務者の委任状がなければ、第三者が閲覧することはできませんので、実質としては登記の事実が世間に知れる可能性は低いと言えます。
一応、担保登記は事実されますので、敢えて「デメリット」に挙げておきます。
- 企業の動きを銀行に赤裸々にされる
売掛金の残高等の動きは毎月銀行に報告することになります。それによって企業の売上先や毎月の売上高の動きは銀行に全て伝わることになります。(これは別に悪いことではないのですが)
在庫についても、毎月の在庫高を報告することになりますので、在庫管理等の内部管理体制がきちんとできている企業でないと、ABL融資は利用できないことになります。
- 銀行取引の構図を変えることになる
最後に、ここが一番のポイントになりますが、複数の銀行と取引をしている場合、ABLを利用するには、どの銀行を利用するのかよく検討する必要があります。
それは、「ABL融資=運転資金を全て任せる」イメージになりますので、ABLを実施する銀行とはメイン銀行と位置付けると言っても過言ではありません。
つまり、ABLを実施する銀行と、それ以外の銀行とは今後どのような融資取引を行っていくのかよくお互いに方針を事前に確認しておく必要があるのです。
このようにABL融資を実際に検討する場合は、メリット・デメリットの双方からよく検討することが必要です。ご判断に迷われている方がいらっしゃいましたら、ご遠慮なく弊社にご相談ください。