企業経営において売上を追い求めるのは当然ですが、売上をあげて何を得るのかをきちんと理解できていない企業を多く見かけます。
「売上」は「利益」を上げるための手段である
当たり前のことですが、この当たり前のことができている会社とできていない会社の差は「黒字企業」か「赤字企業」かではっきりと結果で分かれます。今回は「売上」ではなく「粗利」を追うためには何をすべきかについてお話をします。
先日、新規でご相談のあった経営者の決算書等の資料を見ると、売上はさほど下がってもいないのに、粗利が大きく低下し、営業赤字になっていました。
粗利が下がっている要因を聞いてみると、利益幅は「20%」とっているつもりだと経営者は言うものの、取引先ごとの採算管理ができていない状況でした。
肝心の大口取引先の粗利率は「13%」しか取れておらず、その他の取引先についても概ね「16%」ほどしか取れておらず、経営者の頭の中の「20%」とは随分乖離していたのです。
なぜ利幅が取れていないのか?要因を聞いてみると色々問題点が出てきました。
〇取扱商品数が多すぎる
〇取引先の言いなりで商品を揃え、かつライバル社との競合を恐れ、積極的に「安値」を提供していた
〇オーダー即納品が多く、価格設定を冷静に考える時間がない
しかも、さらなる問題点として
〇取引先の要望?からオーダーされた商品以外に、備品や消耗品をタダで提供するように言われる
〇納品は自社で車で現場に運んでいる
などあり、「真の原価」を考えると、一番の大口先の「真の原価率」は「5%」程度だったのです。
手間と時間をかけて大口の売上を作っても、手元に残る利益は「5%」であればやる意味がないと言えます。(手間が全くない5%の粗利であれば話は別ですが)
この経営者は「売上」だけに目を向けていたことで、赤字の要因を振り返れていなかったのです。
昨今の物価高を考えると、今までのビジネススタイルでは利益を得ることはさらに難しくなってきます。
大切なのは
〇自社の付加価値をどこに求めるか(品質、サービス、価格、スピード、アフターケアなど)
〇付加価値の対価をどう価格に反映させるか
になります。そのためには売上を追う前に、自社の商品やサービスの価値を理解し、その価値の対価をどのように価格に反映させるかが問われます。
決して「安売り」しないためにも、なぜ自社の商品やサービスの需要があるのかを冷静に振り返ることが「黒字」企業への条件になります。
毎月の「売上」報告だけを求めている会社は振り返ってみる必要があります!