リスケジュール(以下リスケ)を実施し、元金返済を開始する際に、返済金額の按分を行うことを「プロラタ返済」と言います。
プロラタ返済には「残高プロラタ」と「信用プロラタ」の2種類があることは皆さんよくご存じだと思いますが、「信用プロラタ」の場合は、保全されている部分と保全されていない部分を分けて考える必要があります。
今回は、信用プロラタの考え方の基準となる「保全額」について解説します。
前回でも触れましたが、融資の保全対象は主に下記のものがあります。
1、2、5については、評価は誰が見ても簡単なので問題はありませんが、3、4については、取引銀行間でも評価に対する考え方が分かれてきますので、「信用プロラタ」を進めるに当たって合意形成に一苦労します。
では、3~4の担保資産についての評価をどのように考えたらよいのか、お話しします。
不動産については、担保取得している金融機関は個別に評価を行っております。従って同じ物件に対する評価も全ての金融機関の評価額が完全に一致はしておりません。
そこで、私は「固定資産税評価額」を基準においております。
固定資産税評価額を基準において、さらに以下の2つの評価額設定を行っております。
つまり保全額を「評価額」ベースと「時価」ベースの2種類で作成し、どちらを採用するか金融機関に提案しております。(保全がある銀行と保全がない銀行の思惑でズレますが)
要はこちらはたたき台を出すので、あとは決めてくださいといったスタンスです。
近年、ABL融資などで「売掛金」「在庫」を担保取得しているケースが多くあります。
在庫・売掛金については、担保権のある金融機関が毎月評価を行っている(厳密には評価は外部機関に委託しています)のですが、問題は「毎月残高が変動する」ことになります。
売掛金や在庫は日々出し入れがありますので、どこかに基準を設定しないといけませので、私は「直近決算期」の期末残高を基準においております。
次に評価をどうするか?になります。ここも難しいテーマになりますが、私は不動産のように以下の2つのケースを提示しております。
極端な2つの考え方ですが、売掛金はまだしも、在庫の評価額の基準をどこに置くかは正直分からないのが本音です。(担保取得して外部評価を行っている金融機関以外は分からないでしょう)
そこで、極端な2つの基準を金融機関に提示して、どちらを採用するか決めてください!と丸投げするのが無難です。
のように、担保評価に対する考え方や思惑は最初から一致することはまずないでしょう。そこで当方から評価基準の「案」を提示し、金融機関に検討してもらうのが一番と思います。
最後に、「信用プロラタ」はできるだけ避ける方向で交渉し、基本軸は「残高プロラタ」にしてください。
なぜなら、担保があろうがなかろうが、債務者としては「借入金」には変わりはないのですから。