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【事業再生ブログNO.76】「信用プロラタ」における返済額の按分基準はどこにするか?(その1)

2022/04/01

リスケジュール(以下リスケ)を実施し、元金返済を開始する際に、返済金額の按分を行うことを「プロラタ返済」と言います。
プロラタ返済には「残高プロラタ」と「信用プロラタ」の2種類があることは皆さんよくご存じだと思いますが、「信用プロラタ」の場合は、保全されている部分と保全されていない部分を分けて考える必要があります。
今回は「信用プロラタ」の按分方法の考え方についてお話をさせて頂きます。

「信用プロラタ」とは何か?

改めて「信用プロラタ」を解説しますと、不動産・預金・動産(売掛金や在庫)・保証協会保証など保全されている残高を控除した「無担保・無保証・無保全部分」=「信用貸し」の残高シェアに基づいて返済額を按分していくことを指します。

ただし、最近では保証協会保証部分(※100%保証と80%保証)については、信用プロラタから外す考え方も多く見られます。(その理由が代位弁済をまだ受けていないから・・と主張するようですが、私にはあまり解せない考え方です)

※100%保証とはコロナ融資のような「危機特別融資」に適用され、保証協会が100%保証しているものです。80%保証とは「一般貸付」において、20%は金融機関がリスクをもつものです。

例えば、不動産評価額が10百万円で第1順位抵当・根抵当権者あったとして、10百万円の借り入れがある場合、「信用プロラタ」残高は「0円」になります。

「信用プロラタ」を求められるケースはどういう場合があるか?

通常は「残高プロラタ」(保全があるないに関わらず、単純に借入残高で按分する)が適用されるケースがほとんどです。(私自身は残高プロラタにて突き通す場合が普通です)

ただし、過去の経験になりますが、金融機関から「信用プロラタ」を要求されるケースは以下のような場合が多いです。

  • 取引銀行数が多い(多いとは10行ほどを指します)
  • 不動産や預金などの保全が多岐に渡っている(担保物件が多く、複数の金融機関で担保取得している)
  • 保全をとっている金融機関と保全無しの金融機関の差がかなりある
  • リスケ後に追加担保を取得した金融機関があるなど、全行平等の原則から逸脱した場合

さらにわかりやすくまとめると

  • 借入総額が多く、一行あたりの貸出金額も大きい場合(多いとは感覚的な話になりますが5億以上ぐらいです)
  • 他行と保全部分で差があり、自身の銀行への「お土産」が稟議に必要な場合

このように「残高プロラタ」と「信用プロラタ」の違いで言えば、リスケの難易度は「信用プロラタ」のほうが高く、かつ取引金融機関の回収に対する執着心が違ってくることから、債務者の立場としては「面倒くさい」の一言に尽きます。
債務者の立場で考えると毎月1,000千円返済する金額は変わらないとして、その1,000千円の振り向け先をどこの金融機関にするかは、どうでもいいのでは?と言いたくなります。

次回は、「信用プロラタ」における「不動産」「売掛金」「在庫」の考え方ついてお話しします。

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