資金繰りが厳しい状況で何とか借入はできたものの、やはり当面の資金繰りの厳しい状況が解消せず、追加の借入も難しい状況の中で、やむなくリスケジュール(以下リスケ)を考えざるを得ない場合、借入してどのくらいの期間を空けたらよいのでしょうか?
今回は、銀行への心象を害さないリスケ申し出のタイミングについてお話をさせて頂きます。
物価や為替、株価、政治情勢など刻々と状況が変化しているなかで、大企業においても四半期の報告をする際に、業績の「上方修正」もあれば「下方修正」をすることがあります。
まして、体力の乏しい中小企業であれば、なおさら「外部環境」によって状況の変化に業績が左右されてしまうことは多々あります。
そのために、数年前に作成した業績予想が変わってしまうことは当然のことであり、逆に数年前に作成した数字に縛られるほうがおかしいのです。
また、近年深刻な人不足な状況もあり、人件費の増加や人員確保の広告宣伝費も嵩んできている状況も刻々と変化しているはずです。
結論から言うと、「明確な答えはない」になります
ただ、常識的に考えて、借入をして一回も返済をしないでリスケの申し出をしたら、それは「悪質かつ計画的」と思われてもやむをえません。(ただし、天変地異や代表者が倒れたなどといった予測不可能なことが起きた場合は別です)
では、返済を何回したらよいのかについても1回だけじゃ足りない、3回はすべきなどと感覚的な話になってしまいますが、大事なのは、「借入をする時に、どういう考えで借り入れをしたのか?」です。
借入をした際には、運転資金として商品を仕入れて、このくらいの売上を上げる考えがあったとなどの前向きな意味での「生きカネ」にするつもりがあったのかが問われます。
一方、「ただ何か月か資金繰りがもてばいいし、ダメならリスケする」といった消極的な意味での「死にカネ」にしてしまえば、融資は何のためだったのか?と言われるでしょうし、借入時点での資金繰りがどうなっていたのか?など説明する必要が出てきます。
私の経験では、借りて一回も返済をしないでリスケを申し込んだクライアントがいましたが、予想通りリスケに至るまでにはかなりの時間と説明を要する結果となってしまい、「詐欺」といった言葉も言われてしまう始末でした。(詐欺の言葉の是非はともかく、銀行として一度も返済を受けない融資がリスケになれば銀行担当者としても相応の説明義務を負ってしまうからです)
では、仮に融資を受けたとしても、目先3か月後の資金繰りが回らなくなり、かつ追加の融資が期待できない事態が予想されている場合にはどうしたらよいでしょうか?
その際には、毎月の返済金額と営業キャッシュフローとの対比で考えることがポイントになります。
例えば
の場合を考えてみましょう。
営業キャッシュフローが黒字だとしても年間の返済額に届かなく、かつ財務内容的に追加の借入が難しい場合には、リスケジュールを選択すべきでしょう。
当然ながら営業キャッシュフローが赤字であればなおのことです。
また、仮に5百万円の融資が可能ですと提案を受けたとしても、上記の例を考えると
返済額 | ▲12百万円 | (5百万円分の返済もさらに加算されてきます) |
営業CF | +1百万円 | |
融資 | +5百万円 | |
差引 | ▲6百万円 |
となります。手元資金が6百万円減ったとしても、1年回せるだけの資金繰りが組めるのではあれば、リスケの判断を遅らせるのもひとつですが、手元資金がもう足りない状況になるならば、敢えて新規借り入れをしない勇気も必要です。
5百万円の新規融資を受けない場合は
返済額 | 0 | (当面1年間返済額を0にします) |
営業CF | +1百万円 | |
差引 | +1百万円 |
ふたつを比較すると手元資金が減るのか増えるのかが大きな差になってきます。
もちろん、リスケを全面的に推奨しているのではありませんが、冷静に資金繰りを検証して、「借りない勇気」も経営判断としては大切だということを分かって頂ければと思います。