2月から日銀のマイナス金利政策がスタートし、皆さんを取り巻く金利環境も影響が出始めております。身近なものとしては、預金金利の引き下げ、MMFの繰り上げ償還、住宅ローン金利の引き下げなどの動きが出てきております。
企業取引においても、資金調達コストは下がってきており、借入金利や社債調達コストにも動きがみられております。
弊社に対して質問が多い話で、現在リスケジュールをしている再生途上の企業などの借入金利にはどのような影響が出るのかについて、今回はお話させて頂きます。
最初に結論から申し上げれば、「再生途上企業の金利が下がることはない」と言えます。いかに市場の金利が下がれども、債務者の信用力が上がる(信用格付けが正常先になる)ことにならなければ、金利の引き下げの理由にならないのです。また、既存の借入金の金利を引き下げることは正常先であったとしても、なかなか難しいものです。
あくまで、正常先のケースですが、他の銀行に肩代わりをされる恐れがあるようなケースとして、取引防衛のために稀に既存金利を引き下げて対応することもあります。要注意先以下の企業に対して、他の銀行が積極的に肩代わりのセールスをしてくることは、なかなかないことからも、既存金利の引き下げの可能性はほぼないと言ってもいいでしょう。
リスケジュールを申し出る際に、改善計画書を提出して再建を行っていると思いますが、提示した計画値よりも、かなり下回る実績しか残せていない企業に対しては、金利を逆に引き上げる動きも考えられます。その根拠として、赤字をいまだに連続して計上している企業の信用力はより低下していくことになり、銀行としても貸倒れリスクが上昇してしまうことになります。そのリスクの対価として金利を引き上げることになるのです。
では、金利を引き下げる手法はないのか?と言われると、ひとつあります。それは、元金と利息を合計した返済額は変えないが、金利を引き下げた分を元金に充当するやり方です。
これは、あくまでリスケを実施している企業に対する方法ですが、再生途上の企業に対して銀行は少しでも元金の返済スピードを早めたい意向のもとで行われます。この方法は多くの交渉事例がありますので、是非銀行と相談する価値があります。
マイナス金利の影響で銀行の正常先に対する貸し出し利回りは低下せざるを得ず、銀行の収益が低下することは必至です。そのような環境下で、業績不振企業に対しては、しっかりと貸倒コストに見合う金利を確保しなければならないとの考えが、これまで以上に強くなってくると思います。