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【事業再生ブログNO.8】経営改善計画書は誰のために作成しているのか(その1)

2015/03/20

リスケジュール(以下リスケ)を実施している先は、経営改善計画書(以下改善計画書)を金融機関から提出を求められます。しかし、実際に提出できている企業はリスケ実施している先の3割程度と言われております。
この3割というデータが何を意味しているのでしょうか?
作成の仕方が分からない、作成しても説明に自信がないなどの消極的な理由が多く挙げられています。このような状況は、そもそもリスケの意味を理解していないのでないかと考えさせられます。リスケとは事業再構築のための時間をもらっていることであり、決して返済方法の変更をするだけのものではないということです。
今回はリスケには不可欠な改善計画書は誰のためのものであるか、その意味をお話しさせて頂きます。
取引銀行から「改善計画書を早く出してほしい」と言われているから、すぐに作成して提出したいと言われているから、急ぎたいとの相談をクライアントから良く受けます。もちろん、ダラダラと作業をしてはいけませんが、早合点して提出してはいけません。

早合点して作成した改善計画書はこうなる

とにかく早く提出することを目的として作成した改善計画書が陥りやすいパターンを挙げてみます。

  1. 作成を会計事務所に丸投げしてしまう
  2. 売上増加に頼って黒字を創出する
  3. 現在の在庫の中身を確認しない
  4. 2年目には借入返済を通常のペースに戻してしまう
  5. 固定費削減の根拠に乏しい

1.は社長が数字に疎いことから、取引銀行に早く提出するために顧問の会計事務所に「急いで作ってほしい」と丸投げをしてしまうケースです。この場合には、社長の考えが入っていないこと、そして会計事務所が金融機関よりに作成してしまう(詳細は後述)ことから、数字先行=足が地についていない改善計画書になることが多いです。 さらに、作成を他人に委ねていることで社長が説明することが出来ないケースもあります。また、会計事務所が依頼先の商売の本質を分かっていないことも多々見られます。

2. は、本業の利益が赤字続きにも関わらず、売上増加だけに頼って黒字になるだろうと計画してしまうケースです。これも1)と同じですが、社長が自社の内部を振り返っていないことが多いです。赤字の要因が売上減少になるにも関わらず、計画値で売上が右肩上がりになるのは、信憑性に乏しいと見られ、独りよがりな計画と言えます。

3.は特に「卸売業」に言えることですが、現在の在庫の価値を正常に引き直すことをしていないケースです。在庫が増えれば、理論的には利益は増えますし、在庫が減れば利益は減少します。過去の決算で黒字を出したいがために、本来の在庫の価値よりも高め(ないしは陳腐化している在庫を看過している)に設定している会社もあると思います。改善計画書を作成するに当たっては、厳しく在庫単価を設定し直す必要があります。

4.借入の返済原資は主として本業が生み出すキャッシュフローにあります。不要資産の換金化はあくまで一時的なキャッシュフローになることから、安定した借入返済には、本業が黒字化することが必須です。しかし、リスケを脱出することだけに目を奪われて、2年目から返済を正常化させるのは非常にリスクが高く、実現性が乏しいと思われます。

5.は、1.、2.と同じことが言えますが、社長が会社の中の数字を理解していないことに繋がります。固定費の削減については、現状の社員構成そして、売上に対する「変動コスト」「固定コスト」の選別ができていないとどのコストを下げていくのかの検討もできません。銀行はすぐに「役員報酬、人件費を削減しなさい」との言葉を出しますが、それは、銀行が取引先の商売を理解していないから言い出すのです。

人件費の削減は最終手段として、まずは人件費以外のコストはどういったものがあって、どうすれば削減できるのかについて、じっくり社内で検証すべきです。

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