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【銀行融資ブログNO.148】融資取引の根幹たる「銀行取引約定書」に目を通したことありますか?(その➀)

2024/09/01

「銀行取引約定書(以下約定書)」とは、金融機関から融資を受ける際に最初に取り交わす契約書になりますので、融資取引のある方は必ず手元に本契約書があるはずです。
ただ、約定書に目を通したことは少ないと思います。今回は約定書のなかでも知ってて欲しいポイントについてお話をさせて頂きます。

銀行取引約定書の内容は変更できない

約定書は冒頭に述べた通り、融資取引の最初に交わす契約書のことです。融資取引のたびにお互いの約束事の契約を交わす手間を省くために、「普遍的な約束事」についてお互いに取り決めを行うようにしております。さらに、実際に融資を受ける際には例えば長期借入を行う際には「金銭消費貸借契約証書」を交わし、対象金額、元本の返済方法や期日、利息、連帯保証人などの個別の契約を交わすことになります。

それぞれの金融機関ごとで約定書は決められておりますが、一般的な内容はどの金融機関でも共通です。(全国銀行協会のHPに雛形が掲載されています)

なお、「約定書」の文言変更は契約前・後においても基本的には認められておりません。ただし、銀行との交渉により、上記のとおり「金銭消費貸借契約証書」等の個別の契約については条件変更の交渉の余地があります。

銀行取引約定書に記載している項目で特に目を通しておくものは何か

約定書の中でも債務者に大きくかかわる項目は下記の4点です。

➀「期限の利益」喪失事項
➁「利息」「遅延損害金」
➂「相殺」「払い戻し」充当
④「報告」「調査」

この中でも一番注意して欲しいのが➀の「期限の利益」喪失に関わる条項です。

「期限の利益」とは借入期間が5年だとして5年間の分割返済を契約通り行っていれば、その5年間の時間は債務者の利益になるとの意味になります。

ただし、約定書の契約を違反した場合に、期限の利益を喪失することがあります。
期限の利益を喪失する事由には「当然喪失」と「請求喪失」の2種類があります。

「当然喪失」とは下記に該当する場合に金融機関から速やかに期限の利益を喪失させます。

  1. 支払の停止または破産手続開始、民事再生手続開始、会社更生手続開始もしくは特別清算開 始の申立があったとき。
  2. 手形交換所または電子債権記録機関の取引停止処分を受けたとき。
  3. 甲または甲の保証人の預金その他の乙に対する債権について仮差押え、保全差押えまたは差 押えの命令、通知が発送されたとき。
  4. 甲の責めに帰すべき事由によって、甲の所在が乙にとって不明になったとき。
この中で特に注意して欲しいのが「3」にある「差し押さえ」です。「消費税」「法人税」などの租税や社会保険料などの支払が遅延し、預金口座の差し押さえを受けた場合には原則的には期限の利益を喪失し、借入金を全額一括返済することを求められます。

ただし、実際に金融機関は、杓子定規な対応をしませんが、差し押さえの状態を放置していると、一括返済を求められることがあります。

最近は年金事務所の対応が強硬であり、差し押さえの脅威が以前より増しておりますので、期限の利益を守る観点からも、きちんと分割交渉の場に出るようにしてください。

次回は、約定書のポイントの続きをお話しします。

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