バランスシート上で「役員借入」がある場合、金融機関は「資本」で見てくれますよね?とよく質問を受けます。その質問への答えは「必ず見なすとは限らない」になります。
では、どのような条件があれば「資本」で見なしてくれるのか?見なせないのはどういった場合か?今回は「役員借入」に焦点を当ててお話をします。
そもそも「資本」で見なすとはどういった意味なのか?まずはここから考えてみる必要があります。「資本」とは返済義務がないお金のことです。つまり、「資本でみなす」=「返済を急がない」ことになります。
日本政策金融公庫の「資本性劣後ローン」があります。この商品はあくまで「長期借入」ですが、返済期間が最長20年で期限一括返済になります。最長20年の間は返済義務がないことから「資本」に近い借入となるのです。
また、公庫が「劣後ローン」の証明書を発行することで、他の金融機関も資本で見なすことができます。
話を「役員借入」に戻しますと、「役員借入」も「資本」で見なしてもらうためには、公庫の劣後ローンと同じ理屈が必要です。
つまり
〇他の借入金よりも返済を急がないこと
〇返済を急がない証明が必要なこと
この2点をクリアすることが条件になります。では、この2点をクリアするためには
〇役員借入の貸し手の資産が潤沢であること
〇役員借入の貸し手の「確定申告書」を提出していること
この2点が必要になります。
私が銀行員時代に金融庁検査の時にはよく取引先の経営者の確定申告書をもらいに走り回っていた毛記憶があります。これは何を目的にしているかというと「経営者と会社との一体査定」のためです。
「一体査定」とは経営者個人の純資産を会社の純資産に加算するものです。
「一体査定」のためには経営者の資産・負債調べを行い、さらに収入のエビデンス(確定申告書)を添付する必要があります。
つまり、「役員借入」を「資本」で見なすためには「一体査定」と同様のプロセスをたどる必要があります。
〇経営者の資産が潤沢にあり、役員借入の返済は全く急がないことが証明されること
このためには「確定申告書」が必要なのです。
金融機関の担当者から確定申告書を求められても「自分個人の情報を丸裸にされたなくない」理由から提出を拒む方もいますが、拒んでいると「経営者との一体査定」が出来ず、かえって会社の借入にマイナスになります。
あまり情報開示を拒みすぎると自信の首を絞めることにもなりますので、確定申告を求められたら「どういった理由で欲しいのか」をきちんと聞いて頂くことをお勧めします。