銀行借入の返済や、赤字で運転資金を賄うために経営者自らや経営者の家族から借り入れをして事業を継続している企業をみかけます。
このような企業に共通しているのは銀行から新たな借入が出来ない状態にあることです。ではなぜ経営者自らの貯金を会社に投入してまで事業を続けるのか?そこには経営者の思考を理解することが大切です。
今回は役員借入をすることが正しいのか否かについてお話をさせて頂きます。
企業がお金を支出する項目は多くありますが、大きく分けると以下のものがあります。
〇人件費 〇仕入先・外注先 〇税金・社会保険料 〇銀行返済
この上記4つの支払項目の優先順位はどう考えますか? 私がこれまで経営者と話をしてきた経験から出てきた優先順位は
➀銀行返済
➁仕入・外注先
➂税金・社会保険料
④人件費
このようになっているケースが多いです。では正しい支払順位はどうでしょうか?ポイントは事業継続が可能か不可能かで判断します。
➀人件費(社員がいなくなれば事業は継続不可)
➁仕入・外注先(仕入・外注ができなければ継続不可)
➂税金・社会保険料(換価の猶予や分割払いは可能)
④銀行返済(リスケ契約が成立できれば継続可能)
経営者の考える順序と正しい順序を比較すると「銀行返済」の順位が全く逆なのが分かります。
では、なぜ経営者は「銀行返済」の順位を1番にするのでしょうか?
それは「返済し続けていれば、また貸してくれる」と思い込んでいるからです。それは自社の財務内容等は度外視でただ返していればいずれチャンスがあると思っているのです。
では返済を続けていれば新たな融資は可能なのでしょうか?もちろん、会社の財務内容や業績が通常通りに安定していれば、借りられる可能性は十分にあるでしょう。ただし、赤字が続いて債務超過に陥れば借りられる可能性はかなり低くなります。
経営者は自社の財務内容や業績には目を背け、「返し続ける」ことを第一義に考えていることから「役員借入」をしてまで返済を続けているのです。
では役員借入をしてまで返済をする意味はあるのか?についての答えは「意味はない」になります。
次に打つ手は「すみやかにリスケジュールを行い、返済を猶予し、その猶予された時間で経営改善を行う」
これが正しいやり方です。
皆さんの会社では「役員借入」が年々増加していませんか?そのような会社はすみやかに方向性を転換させるべきです。
経営者の「貯金」はリスケをしても、運転資金が足らない場合や、どうしても勝負をかける時の為の最後の資金として手元に残しておいてください。