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【銀行融資ブログNO.134】横暴な「コベナンツ手数料」契約が散見されます

2023/12/15

金融機関が手数料稼ぎの為の手段として「コベナンツ契約型融資」が広く使われるようになっておりますが、今回は私のクライアントで某地銀から提案のあった(まだ正式契約前)コベナンツ融資についてご紹介をします。

注意いただきたいのは「コベナンツ手数料」の名目にかこつけた手数料収益前取りの実態です。(守秘義務の関係がありますので、ぼやかした表現があるのはご容赦ください)

資金使途はM&A買収資金

私のクライアントが某中小企業をM&A(買い)することになり、株式買い取り資金として2億円(期間7年 金利変動1.0%)の融資を申し込みOKとなりました。

ただ、下記の主な条件がついてきました。(細かいものは省略します)

  1. 被買収会社の保証
  2. 被買収会社の株式に対して「根質権」設定
  3. 被買収会社の資産を貸付銀行以外には担保として差し出さないこと

➀、➁は分からなくもないのですが、③は問題あります。③については、本件融資銀行以外と有担保での取引の可能性を遮断することになるので、条文の中身を再度交渉する必要があります。

また、➁についても「根質権」にする必要はなく「特定質権」にすべきです。(「根質権」と「特定質権」の違いは不動産担保における「抵当権」と「根抵当権」の違いだとイメージしてください)
つまり、特定質権にすることで借り入れと紐づけし、借入返済後は質権解除にするのが狙いです。

コベナンツの内容は全く大した内容ではないのに手数料は「7百万」

今回の融資に関するコベナンツ条項については下記のような提示がありました。

  1. 買収会社及び被買収会社の純資産の合計額を直近期または2023年3月期の金額のいずれか大きい金額の「75%以上」維持すること
  2. 2024年3月期以降、買収会社及び被買収会社の経常利益の合計額が「2期連続赤字」にならないこと

この2点については、さほどの難しさはありません。

問題は、この2点の大した内容でもないコベナンツ契約の対価が「7百万」もするのか?というところです。
大した銀行にストレスを与える契約内容でもないのに、借りる側が「7百万円」の手数料を一括で払う必要が本当にあるのでしょうか。

コベナンツの実態は金利の「先食い」にある

今回の融資は(金額200百万円 期間7年 金利1,0% )に対して、手数料7百万円の対価を冷静に考えてみると、単純な金利換算にすれば、「年0.5%」に相当します。

つまり、本来であれば、コベナンツ手数料を「0円」にし、金利を「1.5%」にすればいい話です。
また、融資条件等の約束を交わしたいのであれば、別途「特約書」を締結すればいい話です。

手数料を稼ぎたい銀行の都合で金利を先食いしているのと同じと言えます。昔の「金利スワップ」と同じような手数料稼ぎです。

コベナンツ全てを否定するまでは言いませんが、この程度のコベナンツ契約で高い手数料を要求する提案には非常に違和感を覚えます。

皆さんも「コベナンツ契約」スキーム融資の提案があった場合には、本当に双方にとってメリットのあるものかどうかについてよくご検討の上で判断することをお勧めします。

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