銀行の担当者から決算書や試算表を見た時に「棚卸資産が多すぎませんか?」と指摘された際に、皆様はどのような説明をしているでしょうか?今回は「棚卸資産」の説明方法についてお話をさせて頂きます。
「棚卸資産」には「原材料」「仕掛製品」「半製品」「製品」などのカテゴリーがあり、全てを総じて「棚卸資産」と呼んでいることは皆さんもご存じのこととでしょう。
では、銀行が「棚卸資産」が多いと感じる根拠はどこから来ているでしょうか?
業種によっても在庫の持ち高は異なってきますが、一般的には月商の○ヶ月分をもっているか?が基準になります。帝国データバンクや企業統計から業種の平均値と比較してどうか?というもので、特殊な分析をしているものではないと思われます。
感覚的な言い方ですが、製造業であれば1ヵ月ほど、卸売業であれば3ヶ月分ぐらいが基本形ではないでしょうか?
とはいうものの、業種柄多めの材料を保有しないといけないケースや、最終製品に仕上げるまでの工程がかかることから、結果として多めの「棚卸資産」を保有していることになっている企業もあると思います。
銀行としては決算書や試算表の数字を見て、多い少ないと見ており、あくまで机上の評価だけになっていることから、一番説明に効果的なのは「現物」や「現場」を目で見てもらうことです。
製造業であれば、「原材料」はどういう材料を使って、どのような工程を得て「最終製品」にまで仕上がるのか? 「最終製品」に仕上がるまでにどのくらいの時間がかかるのか?
また、途中の工程を「外注」したりしているのか?などなど数字では見えないリアルな世界を見せてあげることが必要です。
卸売業であれば、何種類ぐらいの商品が必要で、商品ごとにどのくらいのストックが必要なのかも説明してあげるといいでしょう。つまり「数字」ではなく「現物」にて説明することが机上の誤解を解く一番の近道なのです。
商売には季節変動があるのは当然です。例えば3月決算で、4月に売上のピークを迎える企業があったとしましょう。4月の売り上げピークに備えるために、決算月である3月には多くの原材料や商品を仕入れておく必要があります。3月の時点ではまだ売上にはなっておらず、帳簿上では「棚卸資産」が膨らんでしまいます。
数字だけで判断されると「不良在庫を抱えているのではないか?」といった目で見られてしまう可能性があります。その際には4月の売上見込みをきちんと説明してあげることで、銀行担当者が稟議を書く際にも「決算月が年間サイクルのなかで占める位置」を説明できるはずです。
皆様の決算月は商売のサイクルの中でどのような位置にあるのか?また毎年商売も変化していくこともありますので、毎年の決算月はどういった状況であるのかを、説明することで企業の実態をきちんと伝えることができるようになるはずです。
このように、決して「数字」だけの評価にさせないこと、そして企業それぞれの特性をきちんと伝える努力を惜しまないことが、銀行と企業の距離を近くする一番の方法なのです。