ここ数年の日銀の異次元低金利政策により、銀行の貸出金利も過去にないぐらいの低水準になっております。特に、地方銀行の金利攻勢は激しいものがあり、東京への進出に伴い、かなり低金利を提示しているケースがよく見られるようになりました。また、先日の日銀のマイナス金利政策導入により、低金利攻勢はさらに激化してくることが予想されます。
今回は、「銀行の評価を金利だけにすると危ない」をテーマにお話しさせて頂きます。
「晴れの日に傘を差しだして、雨の日には傘を差しださない」と銀行を皮肉る言葉があります。これは、銀行が企業の本質(事業内容、経営者の人間性など)をあまり見ずに、数字だけの財務内容に特化して評価していることが原因です。財務内容が良い会社は、どの銀行でも取引をしたいのは当然です。
「金利は企業に対するプライシング」であると言われます。つまり、「金利は銀行から見た企業評価」の一面があるのですが、果たして金利だけで銀行を評価していいのでしょうか?
本年の9月から「事業性評価」の制度がスタートします。「事業性評価」とは、貸出先の事業の内容やマーケット、ライバル企業の動向をきちんと分析し、財務内容の評価だけに依存しないようにしていこうとする意味が込められています。特に地方銀行においては、地元の雇用や経済にどの程度貢献しているのかも評価の対象になります。つまり、銀行もきちんとリスクテイクをしていった上で、貸出先と長いお付き合いをしていくように国が指導をしているのです。
「雨の日でもきちんとしたお付き合い」ができる金融機関こそが、中小企業が求めているのではないでしょうか?企業も、銀行を目利きする能力が問われている時代になってきているのです。要するに短期的な付き合いではなく、山あり谷ありの流れの中でも長期間の安定したお付き合いが大切になります。
新規の融資取引を開始する際に、「名刺代わりに特別な金利をご案内させて頂きます」と銀行担当者から言われたことがありませんか?私も銀行員時代このフレーズを使ったことがありますが、この特別金利はあくまで、最初の融資の時だけで、長く続くものではありません。というのも、特別金利ということは銀行もその企業と付き合いたいために、無理をしている金利だからです。
銀行取引もビジネスと考えれば、お互いに無理をしたビジネスの関係は長続きしないものです。銀行と企業の本来の関係は、お互いにどんな局面でも信頼をし、円滑に資金を供給してもらい、事業の活性化により、着実な返済を行っていくことにあります。金利はコストのうえで大事ではありますが、金利が低いだけに目を奪われないようにすることが大切です。