3月決算先の企業は既に決算書を銀行に提出して、早い先は新しい信用格付けを付与されている時期にきていると思います。
ここ最近は、経済環境も好転してきて、倒産件数も減少傾向にあるようですが、中小企業においては、まだまだ円安や、物価上昇に伴い、本格的な業績回復に至っていないところも多いはずです。
今回は、「信用格付け」が低下した際に、銀行から出るシグナルは何があるのか?についてお話しします。
決算後の新規融資に注目
直近の決算を踏まえた新しい格付けは決算月の5か月後までには付与しないといけないルールが銀行内にあります。例えば3月決算先であれば、8月末までに付与しなければなりません。また、8月までに新規融資を行う場合には、新格付けを付与した上で、審査をしなければなりません。
つまり、決算申告以降(3月決算先であれば6月以降の新規融資)は新格付けが必要になるのです。
もし、新格付けが旧格付けよりも低下してしまった場合には、融資形態に対して、様々な影響ができてきます。代表的な影響について以下を挙げてみます。
- 金利UP
格付けが低下すれば、信用コストが上昇してしまうことから、その上昇分を金利に転嫁することになります。
例えば、格付けがD→Eに低下すれば、その分倒産確率が上がることから金利が上がってしまいます。今の市場金利は比較的落ち着いていることから、金利のUP提示→格付けが低下したシグナルと考えいいでしょう。(プロパーか保証協会付融資によって差も出ることがありますが)
- 決裁が支店→本部になる
格付け低下に伴い、支店長が決裁できる範囲を超えてしまう可能性もあります。
そうなると、決裁権限が本部に移り、審査時間が長期化することがあります。いつもよりも回答に時間がかかっているケースでは格付け低下のシグナルの可能性があります。
- 保証協会付融資しか提案しなくなった
これまでは、プロパー融資で対応してくれていたが、新しい決算書を出してからは、保証協会付融資しか提案してこなくなった場合も格付け低下の可能性があります。現在は責任共有制度で80%の保証となっておりますが、プロパーよりはリスクが軽減されることから、提案が変わってきた場合も格付け低下のシグナルととらえてください。
- 返済期間が短くなる
これまで長期の融資において、5年でOKだったものが3年でしか対応できないと言われたケースや、3年でOKだったものが、1年でしか対応できないと言われた場合も格付け低下の可能性があります。
2)の決裁権限の話にもつながりますが、これまでは支店長の権限にて3年でOKだったものが、格付けの低下で1年でしか対応できないケースもこちらに当てはまります。
(もちろん本部でOKが取れれば3年でも可ですが)
このように、格付けが低下すると、融資を構成する諸条件に変化が出てきます。皆さんの銀行担当者からこのようなシグナルが出た場合には、まず自身の格付けがどうなってしまっているのかを客観的に分析し、今後の資金繰りへの影響を検証する必要があります。
早め早めの準備及び対策を取る必要がありますので、年間の資金繰り計画の策定をお勧めします。