複数の銀行と融資取引を行っているときに、メインバンクの融資を他行が肩代わるといった一種の「下剋上」のようなことが起こることがあります。今回は、メインバンクを下位行が肩代わる意味について考えてみます。つい先日、私のクライアントでこの事例がありましたので改めて振り返ってみます。
肩代わりとは、融資金額の全てを他行が受け持つことを指します。なぜそうした動きが起こるのかについては、色んな理由が考えられますが、基本的にはメインバンクの対応に不満がある時でしょう。
例えば、融資金額を増やしてくれない、担当者が訪問してこない、担当者とのコミュニケーションが合わない、保証協会しかセールスをしてこない、メインバンクとしての取引スタンスが見えない等、他にも様々ない理由が考えられますが、要約すれば「不満」になります。
かといって、単に感情的な「不満」だけで銀行取引のバランスを変えるのは、経営にとってみればリスクがある話です。
ですので、今後の長い銀行取引をよく考えたうえでの決断が必要になります。つまり、肩代わる銀行が、今後メインとしてどのようなスタンスで取引をしてくれるのかが大きなポイントになります。
では、実際に肩代わりを画策する銀行と肩代られる銀行はどのように感じるでしょうか?
私が銀行員だった経験から考えると、肩代わる銀行としてみると、その会社に対しては、もっと深い付き合いをしていきたく、融資ボリュームを上げていきたいと考えるはずです。かつ、肩代わりをする以上には他行に「大義名分」を立てる必要があることから、今までのメインバンクの融資条件よりも好条件の提示をするはずです。
逆に、肩代わりされる銀行の担当者は上席から強くお叱りを受けることになるでしょうが、その銀行のスタンスが招いた結果とも言えるので自業自得とも言えます。
いたずらに「肩代わり」をちらつかせるのは、あまりお勧めはしません。ただし、融資条件(プロパー、担保の有無、金利、今後の取引スタンス)が、話を重ねても、なかなか納得いくものではないのであれば、他行に相談してみることも策のひとつです。
メイバンクの変更は、銀行取引にとってみると、大きな出来事になりますので、他行がその事実を知った時には、驚きの反応をすると思います。その際には、きちんとなぜそうなったのかについては、他行に説明しておくことが大切です。
話を省いていると他行は、悪いほうに解釈をしてしまうこともあります。例えば、「メインバンクだけがその会社の悪い情報を入手して引いてしまった」とか「この社長は銀行取引をあまり深く考えていないかもしれない」などの適当なレッテルを張られてしまうことを防ぐためにも、きちんと正当な理由を説明することが大切です。
最後に、融資取引だけではなくて、売掛金の入金指定口座や給料支払い機能、仕入等の支払い機能についても、この際、メインバンクから機能を分散させてください。
なかなか、メインバンクを変えるということは、企業にとってはないことかもしれませんが、今までメインだったから不満が沢山あっても変えられないと決めつけずに、会社の将来にとって何が大切かを見極めて判断してもらえればと思います。