業績が低迷し、資金繰りも苦しくなり、やむなくリスケの選択を行ったが、絶え間ない企業努力により黒字転換に成功したクライアントが続々と誕生してきております。
私のフォローのみならず、何よりもクライアントの経営者そして社員みんなの努力の賜物です。
「事業の正常化」の基盤が出来てきたら、次に検討すべきは「金融取引の正常化」つまり「銀行取引の正常化」になるのですが、どのタイミングでいつ「正常化」への道に踏み出すのかは、極めてセンシティブな話です。
今回は、正常化を求めてくる銀行との交渉の際に、気を付けておくポイントについて2回に分けてお話します。
このクライアントでは、黒字転換して2年が経過し、債務超過の解消が来期にも達成できるほどに、収支の改善及び事業基盤の安定化が進んできました。それまでの毎月の返済金額は極力抑え、手元資金の向上を第一義に資金繰りの安定化を図ってきたのです。
1年ごとにリスケの更新を行ってきたのですが、今回はメインバンクより『一気に「正常化」できなければ、稟議が通りません』と言ってきたのです。
正常化の意味とは、「借入金を10年分割返済にて完済できる」ようにもっていくことです。
当社の場合で言いますと、借入金が1億5千万ほどありますので、毎月1,250千円年間で15,000千円返済してくれという話です。(ちなみに当社のキャッシュフローは過去2年で年間30,000千円ほど生み出す力が生まれてきております)
キャッシュフローだけでいうと決して不可能な数字ではありませんが、このキャッシュフローが10年続く保証はどこにもありません。そして、メインバンクが正常化の話を提案する最大の口説き文句は「新たに借入できるようになるので心配ないでしょう」なのです。
皆様だったら、この銀行の提案にすぐに乗りますか?
では、銀行の言う「正常化したら新たな借入ができる」とは本当でしょうか?もちろん、嘘ではありませんが、大事なのはいつから借りられるようになるのか?です。
基本的に「返済の正常化」を達成したとしても、「1年間は新たな借入はできない」と考えておいたほうがいいでしょう。銀行は正常化させた返済をまずは継続できているか?を見てくるのが理由です。
そうなると、当面一年間は新規借入無しで返済できるキャッシュフローが生み出せる自信がまずなければいけません。また、経営環境が急激に変化するリスクに備えて、手元資金が十分に確保されているのか?についても慎重な検討が必要です。
そのためには、売上のシミュレーションに基づく1年間の資金繰り計画が必須です。
最終的にこのクライアントはリスケの正常化には今回は踏み切りませんでした。
その理由はどこにあるのか?手元資金はどのくらいまで確保しておけばよいのか?
そして他に気を付けておくべきポイントはどこかについては、次回お話させて頂きます。