リスケジュールをしてしまうと新規借り入れはできないのか?
今回からHPに「事業再生ブログ」と題するテーマも新たに新設しました。
事業再生と金融機関との取引はどうなるのか? また、事業再生はどのようにやっていくのか?について、実体験をもとにしたお話をさせて頂きます。
一般的にリスケジュール(以下リスケ)を実行してしまうと「新規借り入れができない」と言われています。
これは、一部は当たっていますが、一部は間違っている解釈です。
リスケを申し出するということは資金繰りが多忙になり、本業が赤字に転落し、財務内容が脆弱化しているはずです。その意味では、もちろん新規借り入れは困難です。
しかし、どのようなステージまたは条件をクリアすれば、再び銀行から新規融資を受けられるのか? 今回から2回に分けて、このテーマについてお話をさせて頂きます。今回は、リスケ先が新規融資を受けことができるための、2つの条件についてです。
当然ですが、赤字転落で疲弊した経営体力を回復させることが大前提になります。本業が黒字回復することとは、「営業利益」が黒字回復することを指します。
ただし、過去赤字が続いていて、1期だけ回復しただけでは足りません。黒字回復が少なくとも2期は連続で達成することが必要です。
円滑化法が終了した今は「ポスト円滑化法」と言われており、リスケを実施した先は3年以内に「営業利益を黒字化」させることが大きなテーマとされています。
「営業利益が赤字だが、経常利益では黒字だから大丈夫だろう」と考える経営者がいるかと思いますが、それではダメです。
「営業利益」の黒字化にまずはとことんこだわってください!
1)正常な運転資金とは
借入金には「色」があります。大きく、種類を分けると、「運転資金」と「それ以外」の借入に分けられます。
まずは、運転資金のお話をしますと、企業はどんなに債務超過であってどんなに赤字だったとしても、事業を運営するには必要な資金があります。これを「運転資金」といいます。
例えば、売り上げが回収されるまでには、サイトがあります。一方、仕入や人件費等の支払いを前払いしてしまうと、資金が必要になります。また、在庫を抱えておく必要もあります。
運転資金とは、事業を回転させるために最低必要な資金のことを指します。
簡単な計算式で言いますと、「売掛金(受取手形)」+「在庫」-「買掛金(支払手形)」で算出します。
次に「正常な運転資金」の「正常」とはどういう意味なのかについてですが、「正常」とは上記の算出式の科目の価値が簿価通りにあるかどうかということです。
例えば、決算書上で売掛金20百万円、在庫10百万円、買掛金10百万円の会社があったとします。
この会社の「運転資金」は20+10-10=20百万円と算出されます。
しかし、実際に売掛金の中身を精査したところ、売掛金の中には不良債権が5百万、在庫の中に価値のないものが、2百万円あったとします。
そうなると「正常な運転資金は」以下のとおりに変わります。
(20-5)+(10-2)-10=13百万円と算出されます。
簿価で算出された運転資金20百万円が13百万円に減額されるのです。
金融機関はこの「正常な運転資金」を見ております。まずは、この金額まで借入金額を減らすのが目安になります。
それは、「正常な運転資金」は「利益」で返済を行う借入でないのが理由です。逆の言い方をすれば、「利益で返済しなくてもよい借入はいくらあるのか」を知ることが重要だということです。
次回は、運転資金以外の借入は何なのか? そして、地方の金融機関ではリスケ先への新規融資を初めた!についてお話をさせて頂きます。