医療機関向け融資審査の要所(3回目)

「医療機関向け融資審査の要所」と題して、特に独立開業医向けの融資申し込みのポイントについて4回連載にてお話をさせて頂いております。3回目の今回は「金融機関の付き合い方、選び方について」です。

開業時の金融機関の選定

①開業当初の設備資金は「公的融資」をまず利用すること

 開業当初は、土地建物を新規で購入する場合と、テナントの場合で必要な資金の額は変わってきますが、医療設備の資金調達を考えると、どちらも大きな資金が必要になります。大きな資金が必要な場合には特に、低利で長期の返済が可能な融資が適しております。
その代表的なものは独立行政法人福祉医療機構と日本政策金融公庫になります。
福祉医療機構のメリットは、医業向け融資に特化した組織であり、医業向け融資の知識、経験が豊富にあります。開業資金については最長20年の返済期間があり、返済が計画的に組めるのが特徴です。ただし、融資対象とならない地域もありますので、事前に確認が必要です。
また、申し込む際には、実際の開業、または建設着工前の6ヵ月~1年ほど前に事前に打診を行い、融資の方向性を検討しておくことをお勧めします。一般的に審査に2~3か月ほどの時間を要しますので、スケジュールを事前に組んでおきましょう。

日本政策金融公庫では、新規事業を行うための開業資金を主に個人、中小企業向けに融資しております。独立される開業医向けの融資も検討可能です。設備資金については、返済期間は15年と長めとなっております。また当面の運転資金の調達も合わせて可能です。

②民間金融機関との取引開始には
公的資金の融資がOKとなったとして、次は口座の作成が必要になります。もちろん民間金融機関との融資取引も必要になってくると思いますが、まずはどの金融機関と取引をするのかを考えます。
 
 1)物理的な距離の近さで選ぶのか、それとも融資機能を重視して選ぶか
金融機関を選ぶポイントは、まず物理的な距離の近さ、そして取引の利便性、将来性から選ぶことが多いと思います。ただし、今はネットバンクが普及していることもあり、窓口にいつも行くことはないかと思いますので、近くなくてはいけないということはないと思います。(ただ、あまりにも遠いと取引の理由に乏しくなりますが)
そして、将来性というのは融資取引の展望になります。この点については、後述させて頂きます。

2)取引のきっかけは紹介があるとスムーズ
どの金融機関と取引をしたいかが決まったら、その金融機関に口座を開設しますが、一見で口座開設の相談に行くよりも、その金融機関と既に取引のある経営者からの
紹介があるほうがスムーズです。特にメガバンクでは普通預金の口座開設にも数日の審査が必要ですので、紹介を使ってみるといいでしょう。一方、地元の信用金庫、信用組合は口座開設もスピーディーですし、特に地元で開業される話だとすると、今後の融資取引等の相談にも親切に乗ってくれると思いますので、まずは地元の信金信組がお勧めです。

民間金融機関との付き合い方

 さきほどお話しした公的融資機関とは、融資取引だけのお付き合いになりますが、民
間の金融機関とは融資取引だけに限らず、診療報酬の入金や薬剤等の仕入支払い、職員への給与支払いなど、様々な取引が発生してきます。また、事業拡大に伴い、資金需要も増えてくることから、将来設計のもとで、どの金融機関とどのように取引をしてくのか戦略が必要になります。

①金融機関はステップアップで考えていく
 医業向けの融資取引も一般の中小企業の融資取引も、金融機関との付き合い方という意味では考え方は同じです。つまり、事業の成長に応じて、取引金融機関のラインアップを増やしていくのです。

 1)当初は信金信組から保証協会融資を
 具体的には、開業当初は、公的機関からの借入で十分であれば、次のステップは地元の信金信組とのパイプを作るのがいいでしょう。いきなりプロパー(信用貸)での取引が難しいのであれば、保証協会の保証がついた借入を起こしていくこともひとつです。まずは、小さな金額からでもいいので、融資取引の実績を残していくことが大切です。

2)次に信金信組からプロパー融資が出るようになること
開業から数年が経過すると、事業実績も出てきます。当初の事業計画通りの数値が計上できているのであれば、次にプロパー融資を打診してみるといいでしょう。当初は保証協会保証だけの融資にしか応じなかった信金信組から、プロパー借入のOKのサインが出たら、ステップアップしたことになります。

3)新規設備導入や、既存設備更新のような多額の投資が必要な時にメガの登場
さらに、開業から年数が経過し、既存の設備の入れ替えや、新規の設備投資が必要になってくると、新たな資金需要が発生してきます。特に医療機関の設備は高額であることから、簡単にリースで組めない設備も多いはずです。そこで、ここからメガバンクを登場させるといいでしょう。メガの特徴としては融資金額のボリュームが信金信組と比較すると大きくなります。逆に、億単位の融資になると信金信組では対応が難しいケースも多くなってきます。(少額分散が原則であることから)
開業からの年数がたっていると、メガから新規借入の提案がくるケースも多いかと思いますが、およそ開業から5年目以降メガが登場してくる時期と言えます。

②融資以外の取引はどのようにしたらよいか
 では、メガとの融資取引のステップを踏むためにはどのようにしたらいいでしょうか?全く取引がない状態から億単位の融資になると、なかなか難しいものがあります。
そこで、メガの口座を開設出来たら、給与支払いをメガにするとか、診療報酬の受け取りをメガに変えるなどの、お金の出入りについて取引を開始させることをお勧めします。口座の出入りが発生させることによって、滞留するお金も出てくるはずですし、手数料をその銀行に落とすことになります。そうすることで、融資の話を持ち出しても、「これまで口座を使って頂いている」という印象を与えることで、一見からの融資申込とは違う対応になるはずです。

このように、金融機関との取引は、どこの金融機関でも同じではなく、投資金額の大小や開業時からの成長度合い、さらに金融機関とどういった取引をしているかによっても左右され来るものなのです。つまり、事業計画を立案する際には、どういった金融機関取引をしていくのかについても、イメージ図を織り込んでおいたほうが、より計画的な資金調達につながりますので、是非参考にしてください